交通事故に関する言葉は「分かりづらい」。そこで用語集を作ってみました。

             は  ま  や  ら  わ


あ  い  う  え  お

  ⇒ 項目    慰謝料  慰謝料の補完性  著しい過失  逸失利益  

        
    いしゃりょう  慰謝料
 交通事故による慰謝料とは、事故によって肉体的、精神的苦痛を受けたことに対する損害を金銭に評価したものです。しかし、この苦痛を金銭に評価する根拠はありません。確かな根拠がないのですが、実務では人為的に基準を設けています。それが、自賠責基準  任意保険基準 裁判基準  です。特に、裁判基準は、日本弁護士会交通事故相談センターが公開している基準でより高額になっています。但し、これは、あくまで一応の基準ですので被害の程度や加害者の対応によって変わってきます。


    しゃりょうのほかんせい    慰謝料の補完性   
 財産的損害の賠償の足りない部分を、慰謝料をもって補完して解決する働きを、慰謝料の補完性といいます。とかく硬直的になりがちな法解釈に、実情に即した妥当性を与える上で重要な役割を果たしています。


   いちじるしいかしつ  著しい過失
 著しい過失とは、重過失よりやや程度の低い過失。脇見運転、酒気帯び運転、著しいハンドルまたはブレーキ操作の不適切など

    いっしつりえき  逸失利益
 事故によって片腕切断などの後遺症のため労働能力が減少し、将来の収入の減少による損害のことを逸失利益といいます。死亡した場合も同じです。算定方法は、実質的な逸失利益を算定するため、まず基礎収入、労働能力の減少に基づいて粗損害を算出し、これから先取り利益を中間利息として控除し、死亡事故の場合はさらに、生存していたら支出していたであろう生活費を控除します。

か  き  く  け  こ

   ⇒ 項目   過失  過失相殺  過失割合認定基準  後遺障害による損害  後遺障害の慰謝料


   かしつ  過失             → top
 過失とは、運転者として、当然、払うべき注意義務を尽くさないで事故を起こすことです。たとえば、車間距離をとらない走行での追突、居眠り運転などです。なお、加害者の過失を証明するのは、被害者側です。また、過失相殺を前提に、被害者の過失を証明するのは加害者です。被害者は、自分の無過失を証明する必要はありません。  
 人身事故の場合は、自賠責法により、被害者側に加害者の過失を主張立証させるのは酷であることから、その証明しなくても加害者は事故の責任を負う原則になっています(無過失責任の原則)。加害者の免責規定がありますが立証は容易ではありません。
 物損の場合は、民法709条の原則どおり、被害者側に加害者の故意、過失の立証責任があります。


  かしつそうさい  過失相殺      → top
 過失相殺は、加害者と被害者との間において損害を公平に負担させるという公平の理念に基づいていま す。民法722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償額を定めることができる」と定めています。
 ところで、自動車と歩行者とでは自動車の方が優勢であるため、過失相殺は歩行者保護のため自動車に対して厳しい割合になっています(優者危険の負担)。
 なお、過失相殺の割合を決めるに当たっては、現在、日弁連交通事故相談センターが作成した過失相殺認定基準に基づき、具体的事故の事情により加算、減算しています。


  かしつわりあいにんていきじゅん  過失割合認定基準     → top
  昭和40年代、過去の判例に基づいて、事故の態様ごとに過失の割合をパターン化した過失割合認定基準表が出され、大量の事故の処理に役立っています。なお、この過失割合認定基準表は任意保険あるいは通常の損害賠償を請求する場合に利用されます。自賠責保険では、被害者に重大な過失がある場合だけ過失相殺されるためこの基準は利用されません。

   こういしょうがいによるそんがい  後遺障害による損害  → top 
 傷害が完全治癒にいたらず後遺症が残った場合の損害には、逸失利益、慰謝料、将来の介護料、およびその他の損害があります。自賠責の支払い基準は最下限で、任意保険、裁判基準の支払い基準の順で高くなっています。なお、自賠責法では障害の等級に応じて支払いの限度額内で逸失利益、慰謝料が支払われます。


  こういしょうがいのいしゃりょう    後遺障害の慰謝料     → top
 自賠責保険の範囲での後遺障害の慰謝料は後遺障害等級1級では、1100万円ですが、裁判基準(青い本)では2600〜3000万円です。被害者は、裁判基準で保険会社に損害賠償請求することになりますが、金額は請求の目安です。

さ  し  す  せ  そ

  ⇒ 項目  時効  事故証明書  示談  信頼の原則 

 
     じこう     時効     →  top

 損害賠償請求権は3年、強制保険の保険金の請求権は2年を経過したときに時効により消滅します。
 このように時効期間が異なりますが、仮に強制保険の保険金請求権が時効になっても、加害者に損害賠償請求することができます。なお、時効を止める(中断する)方法は、内容証明郵便で催告した後、調停、訴訟を行う方法と加害者や保険会社に時効の中断の承認をしてもらう方法があります。

   じこしょうめいしょ  事故証明書        → top
 自動車の運転者(被保険者)が、交通事故を起こして保険金を支払ってもらおうとする場合、交通事故を起こしたという証明をしなければ、保険金の支払いを受けられません(事故証明書)。この証明をするのは警察です。そのため道路交通法では、交通事故を起こした運転者に警察に事故届を義務付ています。原則として保険会社は事故証明書がなければ保険金は支払わないのですが、自宅での車庫入れ時の車破損のように事故証明書がない場合は、事故証明書以外で保険会社に納得させられれば保険金の請求はできます。


   じだん      示談     →  top
  示談とは事故当事者同士が話し合って、双方が納得する条件で解決することです。事故の事実認識に食い違いがないときは、裁判所の基準に条件を話し合って、示談によって解決するのが賢明な処理の仕方です。民法上の和解契約で、示談が成立すると示談書が作成されます。

   しんらいのげんそく   信頼の原則    →  top
  交通関与者が、他の関与者が交通秩序に従った適切な行動に出ることを信頼するのが相当な場合には、たとえたの関与者の不適切な行動によって結果が発生したとしても、これに対しては責任を負わないという原則で刑事裁判において定着しています。
 民事でも自賠責法3条但書にこの原則を適用して運行供用者が免責になる例もあります。しかし、それは車同士の事故が多く、被害者が歩行者の場合は、運転者にはより注意義務が加重されるためこの原則が適用されるのは少ないようです。


た  ち  つ  て  と

   

     ちんぎんせんさす    賃金センサス   →  top
  厚生労働省が毎年調査している「賃金構造基本統計調査」をいいます。逸失利益算定時に参考にすることがあります。休業損害算定においても家事従事者、学生は賃金センサスを基準にします。

 また、個人事業者の過少申告でも相当の収入があったものと認められるときは賃金センサスを基準にして請求する場合もあります。
 なお、適用される賃金センサスは事故年度でなく最新の年度のものでもよく、高額な方で請求してもいいようです。


な  に  ぬ  ね  の

 
    にんいほけんのめんせきじゆ  任意保険の免責事由
 搭乗者障害条項で運転士者の故意による事故、無免許運転、酒気帯び・麻薬等のため正常な運転ができないおそれがある状態での事故については運転者本人へは保険金が支払われませんがそれ以外の搭乗者には支払われます。  

は  ひ  ふ  へ  ほ

   

   はいしょうぎむしゃ     賠償義務者
  ≪人身事故の場合≫

  ・事故運転者は民法709条適用(故意・過失は被害者側が立証責任)

  ・運行供用者(車の持主・借主などの保有者で現実に車を支配していた者)は自賠責法3条適用

  ・使用者(会社など従業員などを使用している者)は従業員が業務執行中の事故の場合その責任を負 
   う。自賠責法3条適用。この使用者責任は、従業員の無過失か因果関係の不存在、業務とは無関係を
   立証しない限り免責されない。

  ・特殊責任者(小企業で車の事故を起こしたがその企業が倒産した場合の社長の個人責任)
   民法715条2項適用。
  
    




 ≪行政書士
 行政書士は、裁判基準で損害賠償額を算定します。また、事故現場で調査して、過失相殺の資料 
 を作成します。 
 損保会社の担当者は裁判基準では争う権限がありません。保険会社という枠の中でのみ示談交渉が許さ

  れているのです。

 当事務所が作成した書類を交通事故紛争センターに提出してください。適正な補償での解決が期待でき
 ます。

 

行政書士の役割

 交通事故に遭われた被害者は、意外と孤独になりがちです。身内の方々の慰めや応援は本当にありがたいものですが、交渉相手は、保険のプロです。
 被害者であるあなたの契約損保の代理店や保険会社担当者もある程度は協力してくれるでしょうが、彼らは任意保険の範囲でのアドバイスしかできません。裁判基準でのアドバイスができないのです。
 行政書士は被害者のご依頼に応じて、適正でより高額な損害賠償額が望める裁判基準で損害賠償請求書を作成します(但し、事故の内容により異なります)。
 私ども行政書士は、適正な損害賠償の実現を目指しています
 ※なお、行政書士は弁護士法第72条により直接、加害者や損保会社との交渉はできません。